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教員コラム

Vol.1 「公衆衛生学」という学問から健康や運動の意義を科学する!

運動やトレーニングは競技力の向上だけでなく、健康の増進にも役立つ

歩く、走る、跳ぶ、泳ぐなどの動作は、陸上競技や水泳競技として技能を競い合う場合もあれば、ジョギングや水中運動として生活習慣病や寝たきりの予防・改善に役立てる場合もあります。今日の日本は、平均寿命が80年を超え、高齢化に伴う慢性疾患(すなわち脳卒中や心臓病、糖尿病などの生活習慣病)や筋肉・骨・関節などの運動器が衰弱して要介護状態(寝たきりを含む)を引き起こす危険性がますます高まってきています。

これらの慢性疾患や要介護状態の発生には、いずれも運動不足や老化現象による筋肉の量・質的衰退が主な要因と考えられています。人間の体に備わっている様々な器官は、大概、加齢に伴って衰えていく一方ですが、筋肉、特に骨に付着して体を動かす時に使われる骨格筋(体重の約4割も占める)は、何歳になっても運動やトレーニングをすることによって量や機能を維持・向上させることができるので、定期的な運動習慣を身につけておけば、中高年者になっても慢性疾患や要介護を予防することができ、まさに「健康長寿」を全うできるのです。
栁田 昌彦 教授

栁田 昌彦 教授

公衆衛生学という学問とは

公衆とは「集団」を意味し、衛生学とは「生命を衛(守)る学問」という意味です。したがって、公衆衛生学とは、集団が属する地域や学校、職場などにおいて、病気やけがなどによって生命が脅かされないようにするために、環境を整備したり、法律を制定して政策を展開したり、集団の動向や健康状態の変動などを調査・解析(統計)したりする学問、科学なのです。

公衆衛生学という学問から健康や運動の意義を科学する

病気やけがに罹らないためには、予防が第一です。予防の最善策は生活習慣の適正化であり、中でも運動習慣の確立が大きな予防効果を発揮します。私は現在までに、主に中高年者の運動器機能向上を目的として、地域や職場などの集団に対して軽量のダンベルを用いた「ダンベル体操(身体の主要な筋肉を鍛える10種目で構成され、所要時間は10~15分)」を習慣化させ、肥満や脂質異常症、高血糖などの改善や生活体力の向上などの効果を明らかにしてきました。

また、ダンベル体操を地域の伝統的民謡(山形県の「花笠音頭」や福井県の「イッチョライ節」など)と組み合わせて楽しく集団で取り組める"ご当地ダンベル体操"を創作し、地域レベルで運動を日常化できる社会的環境の整備や支援体制の構築などにも努めてきました。

実際に、福井県勝山市や敦賀市に在住する一般高齢者の方々に、「ふくいイッチョライダンベル体操」を約3ヵ月間継続的に実践していただき、形態、血液成分、体力、生活習慣行動、体調の変化などについて測定・調査した結果、体重やBMI(肥満指数)、総コレステロール値が有意に低下し、起居能力や移動能力などの体力が向上して、体調や生活習慣全般が適正かつ積極的な方向に改善されることが明らかになりました。現在では、勝山市健康長寿課の支援の下、地区ぐるみの活動に発展させるために「夏祭り」や「運動会」、さらには「文化祭」などでこの体操を踊っていただき、普及・啓発に努めております。また、同市内では、女性高齢者グループが自主サークルを立ち上げ、週に1回、仲間との交流を深めながら継続的に練習しています。

以前には、山形県尾花沢市において「花笠音頭」に合わせた「花笠ダンベル体操」を創作しました。同市では、この体操を普及させるために体操のやり方を示した大きなポスターを作って公民館などの公共施設に掲示したり、プロモーションビデオを作成したり、やり方を解説したイラスト入りのリーフレットを作成・配布したり、月に一度実技講習会を開催したりしています。また、毎年8月28日に行われる「花笠まつり大パレード」に、地元の中高年者と保健課のスタッフが「花笠ダンベラーズ」というチームを組んで参加し、昨年までで連続10年出場しています(写真)。地元の伝統文化・行事と健康づくり施策が融合できたことが、この体操の継続性や普及・発展に大きく寄与したと考えています。

健康づくりは本来、個人の意志に依存する主観的行動ですが、運動には本能的欲求がないため、三日坊主で止めてしまうのがむしろ当たり前なのです。したがって、個人の努力(自助)を家族や仲間、地域の健康関連団体(医師会や栄養士会、運動普及推進委員などのボランティア団体など)が支援・協力し(共助)、さらに行政が環境整備や健康施策を展開して(公助)、地域のサポートシェアリングシステムを積極的に構築することが、急速に膨れ上がっている国民医療費(国民が1年間に病気やけがの治療で支払う費用で、現在は約36兆円)の削減に一助をもたらすのです。

花笠まつりで踊る「花笠ダンベラーズ」の高齢者
花笠まつりで踊る「花笠ダンベラーズ」の高齢者
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