こちらに共通ヘッダが追加されます。
  1. スポーツ健康科学部ホーム
  2.  > 教員コラム(Vol.5 藤田 紀昭 教授)

教員コラム

Vol.5 障がい者スポーツの世界

1.障がい者スポーツ研究の社会的意義

 障がい者スポーツは1998年の長野パラリンピック以降、メディア等を通して注目を集めるようになりました。2012年ロンドンパラリンピックはイギリスでは150時間以上地上波チャンネルで放映されるなど「もう一つのオリンピック」として確固たる地位を築いたといえるでしょう。しかし、日本での障がい者の人口比率は5~6%といわれています。こうした少数の人たちのためのスポーツ研究にはどのような意義があるのでしょうか?私は次の3つだと考えています。
□(障がい者に対して)障がい者の健康や体力の維持・増進、そして生きがいの創出。
□(スポーツ界に対して)スポーツ人口の増加と指導技術等の発展。
□(障がいのない人達に対して)生涯スポーツ実践のための環境や条件の整備
 1964年東京パラリンピックが開催されるまで視覚障がい者や聴覚障がい者など一部の障がい者を除き、障がい者がスポーツを行うことは考えも及ばないことでした。東京パラリンピックを契機に徐々に障がい者のためのスポーツ環境が整えられ、指導法や運動効果に関する研究も蓄積されてきました。そして、現在では障がい者がスポーツをすることに驚きがもたれることはなくなりました。このように障がい者スポーツの研究はまず、障がいのある人自身の健康な生活や生きがいのある人生に寄与しています。
 ロンドンパラリンピック、車いすテニスに出場したニコラス・テーラー選手は電動車いすの利用者です。彼は上肢にも障がいがあるため、ラケットを強く握ることができません。にもかかわらず、ランキングポイントを勝ち取り本大会に出場しました。ニコラス選手の存在は少なくとも彼よりも障がいの軽い人や身体機能の高い人であればテニスができることを証明しています。障がい者スポーツの研究はスポーツできる人の幅を広げてくれます。オリンピックが人間の体力やパフォーマンスの限界に挑むという点で価値があるとすれば、パラリンピックは人間の多様性の限界に挑む場として価値があるといえるでしょう。さらに、障がいのある人の運動方法や指導方法の開発は障がいはないけれども運動が苦手な人や体力の劣る人の運動やスポーツの実践につなげることができます。
このように障がい者の運動方法、指導方法、車いすや義足などの用具の開発、運動効果解明は障がいのない人の運動実践に結びつき、高齢者を含め多様な身体状況にある人々の生涯スポーツの実践に寄与することができるのです。

2.障がい者スポーツ研究の特徴

 障がい者スポーツの研究には「学際的な実践研究」「現場との連携の重視」という特徴があります。そもそもスポーツ科学は学際的で実践的な研究ということが言えますが、障がい者スポーツの研究は中でもそのことが際立った研究領域です。本学部のゼミの中で研究方法ではなく研究対象によって特徴づけられている唯一のゼミが私の担当する障がい者スポーツゼミです。したがって研究は様々な分野の研究者と協力し合って進められなくてはなりません。そして、その結果は障がい者スポーツの現場に還元されなくては意味がありません。それ故、現場との連携が非常に重要なのです。私の担当するゼミでは知的障がい者のスポーツの現場をはじめ様々な現場にお邪魔してお手伝いをしたり、調査に協力してもらったりし、研究のための情報を現場からもらうと同時に成果を現場に還元するようにしています。

3.私の研究

 私自身はスポーツ社会学の手法をもとに障がい者スポーツの普及のための政策課題とその解決方法に焦点を当てた研究を行っています。具体的には各自治体や総合型地域スポーツクラブ、障がい者施設などにおける障がい者の運動やスポーツ活動の実態を明らかにし、障害者スポーツ普及に必要な施策を提案していくことなどです。2012年度は前年に施行されたスポーツ基本法の影響もあり、こうした基礎研究をもとにした発言を求められる場面がいくつかありました。内閣府障害者政策委員会小委員会の専門委員として障がい者のスポーツ普及や学校教育におけるインクルーシブ(統合)体育の在り方などについて意見を述べてきました。また、文部科学省委託事業としての実践研究(日本レクリエーション協会http://universal.recreation.or.jp/outline.html)や調査研究(笹川スポーツ財団http://www.ssf.or.jp/research/list/index.html)に協力しました。
 今後も障がい者スポーツの実態を具体的なエビデンスによって明らかにし、それらをもとにわが国の障がい者スポーツの普及発展に寄与していきたいと思います。さしあたり、オリンピック・パラリンピック招致に関してパラリンピックの持つ価値と意義について明らかにし、提言していく予定です。
藤田紀昭 教授

藤田 紀昭 教授

.