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教員コラム

Vol.6 人々はどのようにスポーツと向き合っているのか?
   -スポーツ・スペシャリゼーション理論からみた行動科学-

1.レジャースポーツ関連の複合領域

  レジャースポーツに関連する領域は、余暇時間に行われる娯楽全般を指す「レジャー」、レクリエーション志向から競技志向までを範囲とする「スポーツ」、宿泊を伴う旅行形態である「ツーリズム」の3つの領域が重なり合う複合領域で構成されています。この複合領域は、人々が健康増進を目的としてレジャースポーツに参加し、余暇の充足や楽しさを追い求める活動として、「アウトドアレクリエーション」「リゾートスポーツ」「スポーツツーリズム」といった余暇充足・楽しさを志向するレジャースポーツ活動として3つの活動様式があります。登山やサーフィンのようなアウトドアレクリエーションは大自然に向き合い挑戦するレジャースポーツ活動です。ゴルフやスキーに代表されるリゾートスポーツは保養地に滞在して楽しむレジャースポーツ活動です。スポーツツーリズムはスキューバダイビングやマラソンといったレジャースポーツ活動を目的とした宿泊を伴う旅行活動です。これらの活動は、レジャースポーツの活動拠点となる空間や活動に参加する形態が異なり、さまざまなシーンで多くの人々に楽しまれています。

2.スポーツ・スペシャリゼーション理論と参加者の行動様式

 スポーツ・スペシャリゼーションとは、ある特定のレジャースポーツの参加者が、時間の経過とともに経験を重ねることで知識や技能を習得して、その活動への関与を高めていくという行動様式を表す理論です。スペシャリゼーション理論では、参加者が「気楽な」関わり方をするカジュアルレジャーから「打ち込んだ」関わり方をするシリアスレジャーまでの連続体に沿って、レジャースポーツの取り組みの度合いが違うステージに配列されることを説明しています。
筆者はウインドサーファーを対象とした参与観察によるフィールドワーク研究を行い、スペシャリゼーション発達過程のステージが体験志向参加者→社交志向参加者→競技志向参加者→快楽志向参加者という典型的なキャリアパスで移行する傾向がみられ、ステージの違いによって行動様式が異なることを明らかにしました。ところが、ウインドサーファーのなかには、時間の経過とともにスペシャリゼーション発達過程を前進せずに、途中のステージに「停滞」したり、以前のステージに「後退」したりする変則的なキャリアがみられました。競技志向参加者のステージに停滞したのは、レースの成績で上位ランキングを維持することを目標にして競技に専念したためです。また、快楽志向参加者が社交志向参加者のステージに後退したのは、仲間とのコミュニケーションを楽しむことを優先したことによる場合と、家庭や仕事の事情といった制約によるものです。また、学生時代にヨット部に所属していた経験を生かして、ウインドサーフィンを始めてすぐに用具を取り揃えてレースに参戦した人がいました。これは、類似したレジャースポーツ活動の経験がスペシャリゼーション発達過程のステージを「急進」させた例です。そして、ウインドサーフィン用具の改良や開発が進められたことにより、従来は上級者向けの用具であったショートボードが初心者でも扱い易いモデルが誕生しています。このことにより、ロングボードからショートボードに乗り換えるというキャリアをたどらず、ビギナーが初めからショートボードを購入して参加する「飛躍」が起こることがあります。
一方、世界最高峰と評されるサイクルロードレースであるツール・ド・フランスをテレビで視聴した人が、突如として高額な競技者向けのロードバイクを購入しシリアスレジャーとして取り組み始めるというように「ジャンプ・スタート」をすることがあります。そして、ロードバイクに取り組んでロードレースに参戦している参加者が、マウンテンバイクにも乗るようになりクロスカントリーレースやダウンヒルレースに参戦するというように、技術が異なるレジャースポーツへの「スプリットオフ」がみられることがあります。これは、サーフィンとウインドサーフィン、スキーとスノーボードのように共通するスキルが要求される類似したレジャースポーツでみられる現象です。以上のように、レジャースポーツに参加する人々はさまざまな関わり方をしており、自身のライフスタイルに応じた楽しみ方で、どのようにレジャースポーツと向き合うのかは本人の自由です。

3.「スポーツオタク」のすゝめ

 「オタク」という言葉は、従来、アニメなどの特殊な趣味の世界に没頭している個性的な人のことを指していましたが、最近ではジャンルを問わず、ある程度のこだわりをもち趣味として楽しんでいる「ライトなオタク」が増えています。レジャースポーツの関連領域でも、ハイキング、サーフィン、スキーなどの各種目においてライトなオタクからヘビーなオタクまで幅広く活動に取り組んでいる、いわゆる「スポーツオタク」が存在しています。ここでは、スポーツ・スペシャリゼーションの観点からスポーツバイクを楽しんでいるスポーツオタクの行動をみていきましょう。スポーツバイクに乗る人にはさまざまなタイプがおり、軽快にミニベロ(小径自転車)を乗りこなしている人、自転車ツーキニストと呼ばれるクロスバイクで通勤をする人、マウンテンバイクで野山を駆け巡る人、ストイックにロードバイクで走破する人など、思いのままにスポーツバイクという趣味を楽しんでいます。国内外を問わず多くのメーカーが多様なラインナップでスポーツバイクを販売しています。価格帯の幅も広く、5万円台から20万円くらいのスモールバイク、8万円から15万円くらいのクロスバイク、10万円から100万円超のロードバイクなど、さまざまなモデルが揃えられています。スポーツバイクの価格は、フレームの素材がカーボンか、クロモリか、アルミニウムかによって大きく違い、装着するコンポーネント(ホイール、変速機、ブレーキなどのパーツ)のグレードによっても変動します。価格が高くなるほど軽量で高性能になるので、こだわりをもって慎重に選んでスポーツバイクを購入するように」なります。乗り込んでいくうちにグレードの高いパーツに交換したり、上位機種に買い換えたりする人が現れます。スポーツバイクの趣味に傾倒し、遠乗り用、街乗り用、オフロード用など、目的に応じて買い揃えて多くの自転車を所有する人もいます。このように、レジャースポーツの参加者は、スペシャリゼーション発達過程のそれぞれのステージで趣味を楽しんでおり、幸せなスポーツライフを送っています。あなたも「スポーツオタク」になってみませんか!?
二宮浩彰 教授

二宮 浩彰 教授

ニセコHANAZONOヒルクライム(北海道)<二宮研究室の調査フィールド>

ニセコHANAZONOヒルクライム(北海道)<二宮研究室の調査フィールド>

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