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スポーツ健康科学研究科 博士後期課程2年 北村将也さんの研究論文が、国際学術誌「NeuroReport」に掲載されました。
スポーツ健康科学研究科 博士後期課程2年 北村将也さんが、本学スポーツ健康科学部 石倉忠夫教授・上林清孝准教授と共同で取り組まれた研究論文「Corticospinal excitability is not facilitated by observation of asymmetric walking on a split-belt treadmill in humans」が、国際学術誌「NeuroReport」に掲載されました。
他者の動作の観察により運動関連脳領域が活動することが報告されています。加えて、観察者が繰り返し練習もしくは観察したことがある動作観察時には強い脳活動が生じることが明らかになっています。しかし、これまでの研究では随意動作の観察を対象としており、歩行のような半自動的な動作観察において運動経験や視覚経験が脳活動にどのような影響を与えるのかは検討されていません。
そこで本研究では、左右非対称な歩行速度(Split)条件における歩行観察によって生じる脳活動の検討を目的としました。Split条件への曝露時には歩行パターンが一時的に非対称になるものの、数分で比較的対称に近い歩様を示すようになります。本研究では、左右対称な速度条件(Tied)での歩行、Split条件開始直後(Split初期)の非対称な歩行、Split条件開始10分後(Split後期)の比較的対称に近い歩行の観察が、一次運動野から脊髄α運動ニューロンへ投射する皮質脊髄路の興奮性に与える影響を検討しました。
健常成人15名を対象とし、十字視標(Control)およびTied、Split初期、Split後期における下肢の歩行動作映像を観察させました。観察中には経頭蓋磁気刺激を右一次運動野に与え、皮質脊髄路興奮性の指標である運動誘発電位(MEP)を左脚の前脛骨筋から計測しました。
その結果、TiedおよびSplit後期ではControlよりもMEP振幅が有意に大きくなったものの、Split初期とControlの間には有意差は認められませんでした。本研究の結果は、観察者が普段行っており見慣れた左右対称な歩行観察時には皮質脊髄路興奮性が促進されるものの、経験したことが無く見慣れない左右非対称な歩行観察では促進されないことを示します。今回得られた知見は、運動観察の神経基盤への理解を深めることに繋がるものと考えられます。
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