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スポーツ健康科学研究科 博士後期課程3年 大澤晴太さんの研究成果が「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。
スポーツ健康科学研究科博士後期課程3年の大澤晴太さん(指導教員 井澤鉄也)の研究成果,「Exercise training-driven exosomal miRNA-323–5p activity suppresses adipogenic conversion of 3T3-L1 cells via the DUSP3/ERK pathway」がBiochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載されました。
運動トレーニング(EX)は脂肪細胞の小型化や脂肪分解反応の促進,ならびにアディポカイン分泌異常と炎症反応の改善を伴う脂肪組織リモデリングを通じて,中心性肥満と肥満関連疾患を予防します。しかし,こうしたEXがもたらす脂肪組織リモデリングには,脂肪由来幹細胞 (ASC) の脂肪細胞への分化能抑制による脂肪細胞数の減少が伴っています。
この現象は,代謝的に健康な肥満者にはより小さく,より多数の脂肪細胞が必要であるとする「健康な白色脂肪組織の拡大(healthy adipose tissue expansion)」という概念に反しているかもしれません。したがって,代謝的に健康な脂肪組織リモデリングに寄与する運動療法の優位性を確立するためには,EX によるASCの脂肪分化能抑制機構を明らかにすることが重要です。
本研究は,ラット鼠径部脂肪組織ASCに由来するエクソソームにはEX特異的にマイクロRNA-323-5p(miR-323-5p)が内包され,このmiR-323-5p は,二重特異性ホスファターゼ3タンパク質発現の減少を伴ったリン酸化ERK(Thr202/Tyr204)の増加とリン酸化PPARγ(Ser112)(不活性型PPARγ)の発現増加を引き起こし,3T3-L1細胞の脂肪分化を抑制することを発見しています。エクソソームは細胞外小胞の1種で,エクソソームに内包されているマイクロ RNAは近隣または離れた細胞に取り込まれて,その細胞の生物学的プロセスを調整します。近年,運動特異的な応答・適応現象を制御する生理活性物質は「エクサカイン(Exerkine)」と呼ばれるようになってきました。本研究で発見した EX特異的なASC-exos内miR-323-5pは,EXによる脂肪細胞数の減少を伴う脂肪組織リモデリングを調整するエクサカインの一つになるかもしれません。
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