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教員コラム(石倉 忠夫)

スポーツ心理学を通じて何を学ぶか?

スポーツ・健康科学の学問を通じて何を学ぶか?

石倉 忠夫 教授 石倉 忠夫 教授

スポーツ・健康科学の学問は、理論と実践が強くリンクしています。「今までやってきた練習方法や運動方法が本当に正しくて効果的な方法なのか」「本に書かれていることが本当に役立つのか」ということをからだ全身で理解し、表現する科学なのです。
社会では、自分自身で課題を見つける「問題発見能力」、それを解き明かしていく「問題解決能力」、そして解決したことや新たに分かったことをまとめ、それを他者へ伝える「情報統括・伝達能力」を身につけることが求められています。ところが、「最近の大学生は、知識はあるが行動力が伴っていない」と評価されていることを企業の人事担当者や各種の実習受け入れ先担当者から聞かされます。また、ある大学では、体育実技を「運動習慣を身に着けさせる」だけではなく、「集団で活動する能力」や「人付き合いのスキル」を身につけさせることのできる授業として期待しています。これらのように、知識のみならず、「自ら考え行動し伝える能力」が社会から求められていることは間違いないと言えるでしょう。
スポーツ・健康科学分野では、理論と実践を学ぶことができるのは当然ですが、頭と身体の両方を使うことで『考えていること』と『行動』のつながりを理解し、自分自身を鍛えることができるのが特徴の一つとして挙げられます。

スポーツ心理学を通じて学んでほしいこと

私はスポーツ心理学を専門として教育・研究してきました。その中で、私はスポーツ心理学を4つの分野に分けて捉えています。一つ目はイメージ技法やリラクゼーション技法などを利用して自分の持つ能力を本番で出し切ることができる方法を見つける「教育的スポーツ心理学」の分野、二つ目は技能を能率よく効果的に身につけさせる方法の開発や心理的な状態と身体のコントロールの関係を解明したりする「運動学習・制御」の分野、三つ目は健康の維持・増進のために運動を継続させていく方法などを考える「健康スポーツ心理学」の分野、四つ目は精神的にダメージを受けた競技者に対して心理面でサポートする「臨床的スポーツ心理学」の分野です。
私自身は、二つ目の運動学習を中心に研究しています。つまり、どうすればスポーツの技能を速く身につけることができ、それをどれほど長く身体が覚えているのかということです。例えば、示範の示し方や言葉のかけ方といったスポーツ技能の指導方法、練習スケジュールの立て方など、心理的な面からより良い方法を探っています。「アドバイスは一度に3つまで。頻繁にアドバイスを与えるより、本人がアドバイスを求めて来たときに適切に与えるとより記憶に残りやすい」など、実社会に応用できることも多いです。特に新入社員の教育、子育てなど「人を育てる」場面で生かされると思います。他のスポーツ健康関連分野も、このようなことが多数あります。
また、一つ目の教育的スポーツ心理学では、自分の能力を発揮する方法を探るには最初に「自己分析」を行い、それをもとに「目標設定」をします。目標を立てたら達成するための方法を考え、達成期限を決めていきます。 これは、受験勉強や企業が収益を上げるために行うことと同じです。受験勉強で例えるなら、「大学で何を学びたいのか」を考えて学部を選ぶ。次に実力テスト等で自分の今の実力を知って詳しく分析する。 残された試験日までの日数と成績向上の可能性を考えて短期の目標(次の実力テストで総合偏差値を2点あげる)を掲げ、勉強スケジュールを具体的に決める!といった具合です。競技スポーツでも同じですね。 これらスポーツ選手が持っている競技活動に必要なスキルが一般生活を営む上で必要なスキル(ライフ・スキルという)に応用できることに着目し、北米では、子どもを対象にスポーツ活動を通じたライフ・スキル教育プログラムや、元プロスポーツ選手のキャプテン を講師とした中間管理職向けの自己啓発プログラムがビジネスとして成立しています。ちなみに、世界保健機関(WHO)は、ライフ・スキルには次にあげる10項目が含まれると定義しています:(1)意思決定能力、(2)問題解決能力、(3)創造的思考、(4)批判的思考、(5)効果的なコミュニケーション能力、(6)対人関係の構築と維持能力、(7)自己認識、(8)共感する能力、(9)感情を制御する能力、(10)緊張とストレスへの対処能力。

最後に、伝えたいこと

スポーツに関して、日本人は職人気質であると言われます。しかし、これからの時代、もう少し視野を広げる必要があります。一つの競技だけを続けようとすると、それだけしかできない人間になってしまいます。実際、幅広く競技や遊びを楽しんでいる子どもは、特定の競技でも伸びるのが速いです。また、スポーツだけが人生ではありません。運動を通して学んだことを活かして、様々な分野で活躍することも重要なのです。
大学でスポーツ関係の学問を志す人には、どんなことでも良いので「このようなことをやってみたい」という将来展望を持っていてほしいです。他にも、「問題発見」につながる素朴な疑問を持ち続けてもらいたいと思います。もちろん、「読み、書き、そろばん」と「コミュニケーション能力」は絶対に必要です。スポーツを通して、考える力、表現・伝達能力などの「問題解決能力」「情報統括・伝達能力」を身につけることが、とても大切だと思います。

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