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教員コラム(竹田 正樹)

私が行いたい研究 ~勝つためのスポーツ科学~

pic03_01.jpg  (100577) 竹田 正樹 教授

私は、スポーツ健康科学部に所属し、スポーツ生理学の観点からトレーニングやコンディショニングを考える研究をしています。スポーツ科学の研究は多岐にわたりますが、常々思うことは、その研究が勝つために貢献する内容のものでなければならない というものです。もちろん、スポーツはただ勝利を目指せばよいという意味ではありません。スポーツは勝利を目指して取り組む過程に他の行為ではなかなか体験できない素晴らしいものがあるからで、結果は二の次です。 でも勝つためにどうすればよいかを研究し、科学を勝利に役立てることが、スポーツの文化の発展に貢献できるのです。自分が行っている研究がスポーツ科学の発展に寄与しないのはとても残念な事です。 ですから、スポーツ科学の発展、そしてスポーツの競技力向上に直接的に寄与するような研究をしたいと思っています。


特に興味関心があるのは、身体的素質を測定によって見分けることや、トレーニングによって持久力や筋力がどのように変わってゆくのかを見分けるというものです。呼吸循環機能、血管、筋特性はトレーニングをすれば必ず変わります。 面白いのは、人の細胞は行ったトレーニングに忠実に反応するということです。狙ったトレーニング効果を達成できないというのは、トレーニングのやり方が間違っているのです。反応がとてもセンシティブなのは神秘的にさえ思えます。 でもそのわずかな反応を見つけるのは容易ではありません。それが研究です。学術的であり、かつ、コーチやアスリートにも関心が広まり理解できるような研究をしたいものです。

現在取り組んでいる研究活動の一例

①スポーツ種目に合致した形での体力評価方法とトレーニングの効果の判定

スポーツの特異性(Specificity)はとても重要です。上記のように勝つためのスポーツ科学は一般的ではいけません。アスリートはわずかな差を求めて戦っているのですから。アスリートの要求に応えられるような専門的測定の確立を目指しています。

②高地トレーニングの効果とコンディショニング

賛否両論はあるにせよ、高地トレーニングはやはり効果があるという言う方が正しいようです。でも、本当の意味で科学的にそれを証明するのは容易ではありません。世界の科学者達が英知を絞って取り組んでいますが、 競技レベルの高いアスリートを対象にして、コントロール群を設けて、トレーニング量やその他の要因をコントロールして縦断的な実験をするなど、科学的とされる条件を整えることは決して容易ではありません。しかも、レベルの高い競技者はわずかな 変化しか示しません。ですから決定的な証明はなかなかできなのが現実です。しかし、総合的に見ると、そして経験からしても、高地トレーニングは競技レベルを高めるようです。これは長距離種目に限ったことではありません。 サッカーでも、パワー系種目でも効果が確認されてきています。高地トレーニング効果に加えて、どうすれば順応できるかなどの研究も行っています。

③全日本スキー連盟クロスカントリースキーナショナルチームフィジカルコーチとして

全日本クロスカントリースキーチームのフィジカルコーチをしていますが、クロスカントリースキーパフォーマンスに必要な能力とは何かを見つけるために、同志社大学スポーツ健康科学部施設内で、厳密な体力測定を考案しました。その手法を、各ナショナルチームが利用している国立スポーツ科学センター(JISS)にも応用して、測定環境を整え、選手の評価を可能にしてもらいました。具体的には大型トレッドミルでローラースキーを履いて最大酸素摂取量や乳酸を測りながら、同時に3次元動作解析をして、運動負荷中のフォーム分析をするというものであり、スポーツ生理学とスポーツバイオメカニクスを融合させ、スキーに極めて近い形での代謝や動作のデータを、その日のうちに選手にフィードバックできるようなシステムを整えました。選手やコーチ、さらにはJISSスタッフにも大変喜んでもらえました。今後ナショナルチームとジュニアナショナルチーム選手のデータを解析することで、どのような能力が必要か、そしてトレーニングをしてどのように変わってゆくかを詳細に見てゆきたいと思っています。

また、2014年ソチオリンピック、2018年ピョンチャンオリンピック対策として、いくつかのプロジェクトを提案し(トレーニングとコンディショニングを中心に)、JISSスタッフや民間企業に協力を仰ぎながら、ナショナルチーム、ジュニアナショナルチーム、そしてパラリンピックチームのサポートをスタートさせています。私の立場からは、スポーツ科学の立場からの学術的サポートという意味で、世界と勝負してゆきたいと思っています。

全日本スキー連盟クロスカントリースキーナショナルチームフィジカルコーチとして

ゼミ活動

2012年度のゼミ活動(修士論文2編、卒業論文10編)を紹介します。

  1. 高地トレーニングに伴う高地順応過程の評価に関する研究
  2. 激しい運動トレーニング後の冷水浴が筋パワー回復に及ぼす効果に関する研究
  3. 幼児の運動トレーニングが体力、実行機能、社会的スキルに及ぼす影響に関する研究
  4. ノルディックウォーキングの下肢関節負荷軽減効果とエネルギー消費量増加に関する研究
  5. その他、ゼミ懇親会、ゼミスポーツ大会観戦など

どれも一人ではできませんので、これらを皆で協力する形をとっています。すべてのゼミ生がすべての研究に携わり、お互いに協力し合っています。

番外編

京たなべ・同志社スポーツクラブ(KDSC)の運営により、子ども達にスポーツの楽しさや素晴らしさを伝えてゆきたいと思っています。